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20.神官は王に愛される/吉田珠姫

あらすじ。
虹色の髪と虹色の瞳を持つ冴紗は、黒い髪、黒い瞳の国王、羅剛にある日突然神官に任ぜられ、神殿へ隔離されてしまった。羅剛の真意がわからないまま、ある日、羅剛の婚礼話を聞く…。


神官である冴紗は、お相手である羅剛さま(何故かさま付けで呼びたくなる)はもちろん、民からも大臣からも神官からも後宮の女官にも果ては遠くの国の国王まで、あらゆる人に愛されちゃっている。
もうどこを読んでもさしゃさしゃさしゃさしゃさしゃさしゃ……うるっさいわ!!

今が初夏でよかった、冬だったらコンビニでチョコレートの「紗々」見かけたら「うるせえ!」と怒鳴ってしまうところだったわ、ふう。
そんなら冴紗がいればすべての問題が解決するんじゃ? と思っていたら、当たらずとも遠からずだった。しかしその事実に羅剛さまがへこんでらっしゃるのでつい笑ってしまった。
高永さんの絵はキレイでいいのだが、女性にしか見えない冴紗のイラストを見る度に、何ともこう、むずむずするというか、しょっぱい気持ちになるというか……。そして羅剛さまは「恋する暴君」の森永にしか見えなくて困った……。
しかしこの小説がネタ、あいや、素晴らしいのは、セリフ廻しはおろか地の文まで古風で、徹底的に雰囲気を作りこんでいる点だと思う。
大概のファンタジーは(大概と言う程読んではいないが)、現代文調で、特殊なシチュエーションや背景を語って想像させるけれど、これは「風の谷のナウシカ」に出てくるババ様が語ってくれているようで、何とも味わい深い……。
「たいへん好ましい」という文が出てきて大爆笑してしまった。何ですかその訳文みたいな表現は。狙いですよね?
あと冴紗に「しくしくと」泣かれた時も吹き出してしまいました。そして羅剛さまの言葉遣いも何気に癖になります。
「おまえ、まこと、愛いやつだの。」とか。「ほんにの。」とか。
そんな古風な書き方なのに、もうセリフの語尾の、おそらく60%位に「っ!」「っ?」がついているので、えーいもう、暑苦しいわ!! と思ってしまう恐ろしさ。
そしてやはり、「尊いお腰の剣」で、盛大に吹き出してしまったのだった。すっ、素晴らしすぎまする!

古風な本文を読んだ後、最後にものすごいテンションのあとがきがついている。あまりのギャップに、「このギャップこそがオチなのかも知れない…」と感心してしまったわ。初めて読んだ作家さんなので他の作品はまだ知らないが、さてはものすごいエンターテイナー? なんていうかもう、存在自体がネタじゃないかと思ってしまった本。


wrote:2007-6-11


神官は王に愛される (ガッシュ文庫)

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※↑「お腰の剣」はこちらの本でお読み頂けます。