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74.夜明けには好きといって/砂原糖子

交通事故に遭ったことをきっかけに、顔を整形した主人公・白坂一葉は、「一夜」と名前も変えて別の人生を生きることにする。知り合った女の子の紹介でホストクラブへ面接へ行くと、そこには中学の同級生・黒石がいた。



顔にコンプレックスを持って、どうしても顔を上げて生きられない白坂。もう冒頭からリストラされるわ、再就職の面接に行ったらその会社に大学の同期の女の子がいて陰口叩かれるわ、もうその辺のくだりが微妙にリアルというか、気の毒通り越して心が痛くなってきた。
整形して勤め始めたホストクラブの同僚・黒石は、かつて白坂に告白して付き合っていたのだが、黒石はすぐに転校してしまう。黒石が去った後、実は罰ゲームで黒石が告白していたことが同級生の金崎によってバラされ、それによって一葉はより深い心の傷を負い、更に陰湿なイジメに遭うのだ。そんな一葉は、黒石に対して「復讐してやる」という一心のみでホスト業に精を出し、ゲイである黒石と、「一夜」として再び付き合う。
黒石と付き合うのは、過去と常に向き合わなければならない。しかも一葉が整形したことを知らない黒石は、「一夜」の顔が好きだからという理由で好きになった、とぬかすのだ。精神的にもやさぐれるし仕事はキツイし文字通り身を切るような生活。読んでるこっちももう痛いというか、なんかこう、ずーんと重いものが。
最後はちゃんとハッピーエンドなので、読後感は悪くなく、むしろ良かったね、と思えるんですが。しばらく落ち込んでしまった……。


以下盛大なネタバレ。


同じくホストになっていた同級生の金崎に正体がバレた一葉は、実は整形でそんなに顔が変わっていないことを知る(事故でぐしゃぐしゃになった顔が元に戻っただけ)。黒石は再会した時から「一夜」が一葉であることに気が付いていた、という事がわかってから読み直すと、黒石側の気持ちもわかって2度おいしいです。

最後、前向きに、顔を上げて生きていけるようになったのは、整形のおかげというより、別人になったと思い込むことで、結局は自分の力でそうなったというオチでホッとしました。


wrote:2006-11-22


夜明けには好きと言って (幻冬舎ルチル文庫)

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